2011/01/10

中国の株式市場上昇が見込まれるが懸念材料も存在

2010年の中国の経済は、推定10%と大きな成長を遂げたが、上海A株市場は、見劣りするパフォーマンスとなった。

上海総合株価指数は、昨年、14%のマイナスで、世界の株式市場を通じてギリシャとスペインを辛うじて上回り、下から3番目に低い成績となった。ギリシャとスペインは、欧州の財政危機の中心的な国。

企業収益と内需が大きく改善していることで、同指数は今年、値を戻すことが期待されており、証券会社の間の見通しでは平均20%の上昇が見込まれている。しかし、地方政府レベルでの財政赤字が拡大しており、資金の貸出の伸びが見られる、インフレも高進していることは、株式市場にとっての懸念要因だ。

中国の経済成長ペースは、今年は幾分か鈍化することが予想されるものの、好調な内需、固定資産投資と企業収益は大きく改善すると見込まれている。

中国の国家統計局によれば、昨年1月から11月までの小売り売上高は18%増加、都市部の固定資産投資は、25%増加しており、今年は、小売り売上も固定資産投資も、昨年と同じペースで増加すると予想されている。

ブルームバーグのデータによれば、中国本土企業の一株当たり利益伸び率は今年、最大で36%が期待されており、上海株式市場の上場企業の株価収益倍率は、昨年の18.3倍から13.5倍に低下するという。証券会社では概ね楽観的な見方が支配しており、上海総合株価指数の上昇率予想は、22%から47%と強気の見方が支配的だと言える。

しかしながら、中国本土企業にも懸念材料があり、投資家はこうした問題にも目を向ける必要がある。

公式統計によれば、昨年の中国の地方政府が抱える債務残高は7兆8000億人民元に増大したとされている。市場参加者は、この債務残高が10丁元を超えているものといみている。

地方政府の財務残高が高水準であるだけでなく、税収の減収も危惧される。不動産の売買は、地方政府にとって主要な財円の一つであることは事実だ。

昨年来、中央政府は、不動産市場の鎮静化に向けて様々な対応策を打ち出しているが、不動産価格は上昇し続けており、中央政府は一段と規制を強化する意向で、不動産市場では価格面で、大きな調整が起きる可能性は否定できない。

不動産市場が鎮静化すれば、不動産開発企業からの土地に対する需要が縁、結果、不動産取引の件数が減少し、価格も低下する。したがって、土地取引に関する地方政府の税収も低下することになる。

さらに、国内のインフレが加速し、金利には上昇圧力が一段と加わることになる。昨年11月のインフレ率は5.1%と、2008年7月以来の高水準を記録した。インフレを押し合えているのは、主に食料品価格で、2011年を通じて4%台で推移すると見込まれている。

専門家は概ね、年内に、中国政府が金利引き上げに踏み切ると見ている。インフレ抑制に向けて、預金金利は2回か3回引き上げられる可能性があり、預金準備率も変更されることが予想されている。

一方で、不動産関係の融資上限は7兆元に押さえられ、昨年の7兆5000億元から低減されることになる。マネーサプライも減少傾向にあり、市場にはマイナスの影響を与えることになる。

銀行各行が、資本増強を図っていることも株式市場には、不安要因だ。統計によれば、昨年には中国本土の7行が新株発行で増資に踏み切っており、合計で1300億元の資金を調達した。

今年も、銀行の増資は活発で、中国民生銀行は、200億元相当の資金調達を可能とする新株発行に向けて許認可を受けており、農業銀行も、500億元規模の劣後債発行を計画している。

これらの新株発行により、株式市場から流動性が低下する危険性がある。